副社長の初めての相手は誰?

 ギュッと優しく抱きしめてくれる優輝の腕の中は、とても安心させられ落ち着ける場所だった。


 どこか張りつめているものが、ゆっくりと消えてゆくような気がした。


「…落ち着いた? 」

「…はい…」


 
 立ち上がる希歩を支えながら、優輝は一緒に傍にあるソファーに座った。


 希歩の背中にそっと触れると、みかけよりずっと華奢なのが判る。


 この背中にずっと1人で、重い荷物を背負ってきたのかと思うと、優輝は胸が痛くなった。

  
 顔は違うけど…俯く視線…ちょっとした仕草…

 見ていると胸がキュンとなる…。

 
 きほ…きほだよね?…


 心でそう呼びかけながら、優輝はそっと希歩のリストバントが巻いていある手首に触れた。


 ビクッとして、振り払おうとする希歩だが。

 優輝の優しい眼差しで見つめられると、振り払う事が出来なかった…。

「ずっと、避けていましたよね? 僕の事」

「そ、そんな事は…」

「分かります。いつも、僕のハートが教えてくれますから。貴女の辛い気持ちを」


 何を言っているの…。

 そっと視線を反らして俯いてしまう希歩…。


「もうその辛さを、終らせたいので。聞いてもらえますか? 僕の話しを」


 終わらせる? …どうゆう事? …

 黙ったまま希歩は俯いていた。


「先ずは春美さんの事ですが。僕は、彼女と入籍していません」


 はぁ?

 俯いたまま、チラッと希歩は優輝を見た。

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