夜空に君という名のスピカを探して。
『こんな都会で、星なんか見られるのかな』

「な、なんだ!?」


 思わず呟くと、先ほどの低い声がまた口から飛び出す。

そして立ち上がったのか、グンッと視界が高くなった。

 えっ、私……。こんなに背、高かったっけ。

 私の身長は百五十二センチと低い……はずなのだが、まるで高台にでも上ったかのように世界が広がって見える。

 というか、そんなことより知らない人と一緒にいることの方が大問題だ。

聞こえるのは明らか男の人の声だったし、私は誘拐されたのだろうか。

頭に浮かぶのは『監禁』という最悪な結末。


『あなた……だ、誰?』


 恐る恐る尋ねて、自分の頭でも考えてみる。

最後に見たもの、聞いたもの、いた場所はどこかと記憶を手繰り寄せる。

 聞こえてきたのはキキィーーッというタイヤの擦れるような音。

そのあと、私はどうなったのだろうか。

さらに思い出そうとしたら、頭がズキズキと痛み出した。


「なんだ、頭が痛いぞ……」


 やっぱり声がハスキーになってる。

女なのに変声期かと戸惑っていると、私の身体は眉間を押さえるように手を動かした。

そこで見えた骨ばった手と血管の浮き出た前腕に、目を見張る。


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