愛すべき彼女達 ~十人十色~

夏苗の場合

「春人先生、おはようございます。
アンケート用紙、ここに置いておきますね。」

保健室には、朝早くから押し掛けている生徒でいっぱい。

就任して1ヶ月くらいは、お嬢様らしく大人しかったみんなも。

学園には珍しく

気さくで大人で………優しい先生にメロメロになっている。

そうなると…………

恋をする女の子は、強くて。

それまで大人しく控えめだった女の子とは思えない強引さで

先生に迫っていて、保健室はいつも満員なの。

「あぁ、ありがとうございます。
さぁ、そろそろ授業が始まりますよ。
皆さんもクラスに帰って、授業の用意をしないと
私が先生達に叱られます。
あっ、それから
今日のお昼は会議用の書類を作らないといけないので
体調の悪い方は、担任の先生を通して下さい。」

女の子達に、少し厳しい口調で言っても

「春人先生は、私達の事を考えて言ってくれてる。」

「甘えさせるだけじゃないところが素敵。」

「大人の人の厳しさに………キュンとする!」と

なんでも良いように捉えられて………苦笑い。

春人さんが、愛想よくし過ぎるからだよ!

少し拗ねて横を通り過ぎようとすると。

「3ーCの保健委員さん。
このアンケート用紙、直ぐにチェック入れて渡すから
そこに座って待ってて貰えますか?
落ちてるところがあったら
お昼にもう一度持って来て貰いたいので。」って。

………………………………ウソつき。

アンケート用紙なんて、急ぎじゃないでしょう。

そう思うのに、口の端が上がってくる。

やっぱり、私は特別?
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