悔しいけど好き

稲葉にそれとなく聞くと凪は俺が吹聴した資料室のデートスポットとやらを最近知ったらしい。
稲葉が教えたそうだが余計なお世話だと文句を言いたい。
あそこは元々そう噂されてた所だが、真剣に仕事を全うしてる俺達には大切な場所だ。
そこでいちゃつくつもりは無いが他の奴らに無闇に出入りされたくない。

だから俺らと鉢合わせになりたくなかったらあそこには近付くなと言ってあるが今となってはどれだけ効き目があるかわからない。

今日も興味を持ったらしい奴が資料室にいてたまたま帰り際に資料を仕舞いに行ったら鉢合わせした。
男は一人で背を向け佇みキョロキョロと興味深そうに辺りを見ていた。

「あの、何か?」

「ん?ああ、君か?あの荒川さんを振ったっていう神城くんとやらは」

「は?」

顎に手を添え不躾にじろじろと俺を見てくるこの男。
どこかで見たことがあるが思い出せない。

「ここは君達専用のデートスポットらしいじゃないか。今日は一人かい?彼女も見てみたかったな」

ああ、失敗した。
余計なことは言うもんじゃない。
後悔先に立たず……。

「会社でデートだなんてどうかしてますね?誰がそんなことを言ってるんですか?」

俺だけどね!

「さあ?上層部としては噂が本当か把握しておきたくてね」

「え?…」

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