悔しいけど好き
クスクス笑って指摘すると鷹臣はばつが悪そうに頭の後ろを掻いて、目が合うとお互い噴き出した。

「もういいわ。そんな鷹臣を好きになった私の負け。何でも許しちゃう」

「俺の方が負けてるよ、ベタ惚れなんだから。凪には敵わない」

鷹臣が腕を伸ばし私を囲い込もうとする。
私は寸でで腕を伸ばし抱きしめられるのを阻止した。

「ちょっと、ここ会社だから」

「え、いいじゃん。仲直りの抱擁くらい」

「だーめ!」

ちぇっと舌打ちする鷹臣を余所に離れるとタイミングよくほかの社員が続々と入ってきた。
危ない危ない抱き合ってる所を見られたらまた噂のネタにされちゃう。
何食わぬ顔で挨拶して鷹臣にべっと小さく舌を出して自席に着いた。

「ふん、帰ったら、覚悟しろよ」

奴は鞄を持って外回り行ってきますと言うと、私の後ろを通りこそっと小さく呟いてポンと頭を叩いて出て行った。
叩かれた頭を抑えつい奴の後ろ姿を睨んでると美玖さんににこにこと見つめられてるのに気が付いて慌てて机に向かいパソコンの電源を入れた。

取り敢えず、仲直りできてよかった。
つい上機嫌に鼻歌なんて歌いながら資料を取出し仕事に取り掛かる。
今日は少しどんよりした曇り空だけど心は晴れ晴れと爽快だ。
< 218 / 325 >

この作品をシェア

pagetop