悔しいけど好き

………


そして、今日……


「美玖さん綺麗!」

しきりに感激してくれる凪ちゃんを前に照れながら少し膨らんだお腹を撫でた。

マタニティタイプの真っ白なドレスに身を包んだ私は今日、正木さんと結婚式を挙げる。

「マタニティウェディングも喜び2倍で素敵ですね!」

キラキラとした目で夢見るような顔をする凪ちゃんも神城くんと籍を入れて神城さんとなった。
凪ちゃんも10月に結婚式を挙げるからそのときの事を思い浮かべてるのかも知れない。

「凪ちゃんもマタニティウェディングする?」

「うえっ!?いやっ!私達はまだ!……」

「ふふっ」

照れて慌てだした凪ちゃんを微笑ましく見つめ二人の子供も可愛いだろうなと想像する。

「凪ちゃんのとこも子供が出来たらうちの子と一緒に遊んでね?」

「あ…はい!もちろんです!」

自分達の子がはしゃぎ回って遊んでいるのを想像するとすごく楽しい。
まだ先の事だけど約束して二人でその時の事を思い浮かべてほくそ笑んだ。

「美玖、そろそろだ」

「凪、行くぞ~」

「あ、じゃあ私先に行ってますね」

正木さんと神城くんが控え室に入って来て、凪ちゃん達は仲良く先に会場へと向かった。
別れが怖いなんて凪ちゃんは言ってたけど、心配なんてする必要がないほどラブラブの二人につい頬が緩んだ。

よいしょとソファーから立ち上がろうとすると手を出してくれる正木さんに手を添える。

「正木さんありがと」

「美玖…お前も正木だろ、いい加減名前で呼べよ」

呆れ顔の正木さんについやっちゃったと肩を竦める。
ずっと正木さんと呼んでたからなかなか名前を呼べなくて自分でも困ってたところだ。

「えっと、ごめんなさい。…だ……」

名前を呼ぼうとしてるのになかなか声が出てこない。
期待を込めた瞳がじっと見てると思うと余計に出てこないから見つめないで欲しい。



「だ……だ………旦那さま!」

「え!?」

いつもクールな正木さんが一瞬コケッとずっこけた気がする。
ヘラッとごまかし笑いをするとふうっとため息をつかれた。

「……まあ、いい。おいおい馴れてくれ」

「ごめん…」

申し訳ないとシュンとしてるとオデコをつつかれた。

「ま、旦那さまも悪くない」

しょうがないなと呆れつつ笑って許してくれる旦那さま。
名前より旦那さまの方が呼びやすいかもとか思ったら正木さん益々呆れるかな?

「正木さま、お時間です」

スタッフの人が迎えに来ていよいよだと思うと少し緊張する。
ごくっと生唾を飲むとさらりと頬を撫でられ目線を上げた。

「行きますか、奥さま?」

正木さんは余裕の笑みで私に腕を向けてくれる。
不安も緊張もいつもその笑顔が消してくれた。
そんな彼とこれからも一緒に生きていきたい。
私は安心してその腕に手を添え笑顔で隣に立った。

「ふふっはい、行きましょう旦那さま」


祝福してくれる皆のもとへ、

未来を誓いに。



FIN
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