悔しいけど好き
急に振り向いた奴は私の腕を取り引き寄せると抗えずに胡坐の上に着地した。
ぎゅうぎゅうと痛いくらいに抱きしめられて苦しい。

奴が家に泊まるようになってこうやって抱きしめられることが多くなった。
何をするでもなくただじっと抱きしめてくるから最初は暴れたけど今やそれは恒例となって来て大人しくしてる。
これは慣れちゃいけない気もするけど、案外奴の胸は居心地がいい。

「この鈍感」

「ぎゃ!」

ガバッと離されたと思いきや、またがぶりと鼻をかじられ痛い鼻を摩りながら睨むけど奴はふんと鼻で笑って私を押しのけ立ち上がる。

「寝るか」

「…うん」

手が差し伸べられて、その手を取ると立ち上がらせてくれた。
二人並んで歯を磨いて向かった先はもちろん寝室のベット。
二人で一つのベッドに眠る、これも恒例となりつつある。
最初は抵抗してたけども、それも疲れてきちゃって奴にされるがまま狭いベッドに二人で横たわる。
男女がひとつのベッドで寝るからと言って何がある訳でもない。
何故か腕枕されてるけどほんとにただ寝るだけ。
奴にキスはおろか触れられたことはない。

この状況ってなんなんだろう?

さすがに薄々気付いてはいるんだ、奴の気持ちは。
でも、なんにもしてこないということは私の勘違いかも知れないし、私は奴のことどう思ってるのか分からない。
鈍感と言われても言い返せないのはそのためだ。

ただ、奴の少し高い体温は私を安心させてくれる。
この状態はなんなのか?
私は今日も腑に落ちないと思いながら眠りにつくのだった。
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