悔しいけど好き
二人で笑って脱力するように壁に背を預けた。
しばらく二人で壁に寄りかかって気持ちいい潮風とさざ波を感じていると、ふと、疑問が湧いて奴に聞いてみた。

「そう言えば何でここにいるのががわかったの?私の実家なんて知らなかったでしょ?それに、あの日の告白を…何で私が見てたの知ってるの?」

目を向けると奴は困ったような顔をする。

「そりゃ勿論、稲葉に聞いたんだよ」

「え?明莉から?」

「そらもう、凄い剣幕で…といってもメッセージアプリでだけど。怒濤のように次々メッセージが送られてきて一瞬引いたわ」

私が見た告白シーンから、普段の奴の態度から、私が不安になってたことも全部明莉は奴に伝えたらしい。

顔を引きつらせて苦笑いの奴を見て、今日の明莉の態度に合点がいった。
前日の私の失恋話を忘れたかのように何だかスッキリした顔で心から旅行を楽しんでた。
気に病んで欲しい訳じゃないから良かったんだけども、なるほど、洗いざらい奴に文句を言ってスッキリしたわけだ。

「凪にちゃんと話をしなかったら後でコロスって脅された」

「あ~ははっ、明莉ったら過激なんだから…」

つい苦笑いを溢す。
口止めしなかったから仕方ないけど奴の辟易してる姿に相当なじられたんだってわかってちょっと奴が可哀想になった。

でも、明莉には感謝だ。
お陰で誤解が溶けて私はこれからも鷹臣の隣に居れる。
< 86 / 325 >

この作品をシェア

pagetop