最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~
 
謝るとイヴァンがますます悲しそうな顔をするので謝罪の言葉は控えていたが、今日はたまらず口から零れた。

「お前のせいじゃない」と彼は繰り返した。ナタリアは涙が溢れそうになる瞳を瞼で硬く覆って思う。では、誰があなたをこんなにも苦しめているのですか?と。

ナタリアは病に打ち勝てない自分の無力さを呪う。病に囚われた自分の心と体を呪う。愛する夫と体も重ねられないで何が妻だと、自分を叱責する。

泣いて謝りたい気持ちを無理やり飲みくだし、ナタリアは閉じていた瞼を開いた。

そして無垢を演じて笑う。

「イヴァン様、口づけをしてもよろしいですか? 夫婦は起床したときにキスをするものだと教わりました」

ナタリアは知っている。明るく憂いを見せないことが、彼の瞳からわずかに悲しみを消す唯一の方法だと。

嬉しそうに目を細め、イヴァンが啄むようなキスを与えてくれた。

それを受けとめながら、ナタリアは心の中で問う。

罪深き私に、あなたの妻でいる資格はあるのでしょうか――と。
 
 
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