君色に染まる
「センセはなんで俺が生徒会長になったと思います?」


ドアに手をかけると、後ろから声をかけられた。


「今回みたいなことをするためでしょ」


自分でも驚くほど、冷たい声だった。
また失敗したと思ったら、市原君の笑い声が聞こえてきた。


ほんの数分間で、何度彼に笑われたのだろう。
なぜだか、市原君の前だと自分が自分でないような気がする。


「あながち間違ってない」


そんなことを聞くために引き止めないでと心の中で言いながら、ドアを開ける。


「じゃあ、どうしてこういうことをやろうとしてると思います?」
「みんなを巻き込んでバカ騒ぎするため」
「んん……半分正解です」


だから?としか言いようがなかった。
半分正解だとしても、残りの半分を答えたいとは思わなかった。


市原君との会話を強制終了させるために、廊下に出た。


「神田先生」


ドアに背を預けていたら、相田先生に呼ばれた。
慌ててドアから離れる。


「お疲れ様です」


相田先生は市原君の提案に一番に賛成した人だ。


「そんなに敵視しないでくださいよ」
「彼の案を採用した時点で敵です」


相田先生を置いて職員室に向かう。


「同じ職場で働く者同士じゃないですか。敵だなんて」
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