伝わらなかったあの日の想い
「賢吾が変なこと言うからでしょ?」

私は吹き出したビールをティッシュで拭きながら、むくれる。

「ごめん。悪かったよ。
でも、気になるじゃん。」

そんなの…

「どっちだと思うの?」

「I love you だったらいいな…と思ってる。」

賢吾に真っ直ぐ見つめられて、私は思わず、目を逸らしてしまった。

「残念。
さっきのは、ただの beautiful moon 。」

私は、綺麗な満月を見上げた。

「そっか。残念。」

残念って…

賢吾?


賢吾は、ムクッと起き上がり、ビールを一気に飲み干した。

「賢吾、明日、仕事でしょ?
そろそろ寝なきゃね。」

私が声を掛けると、

「いや、明日も有休もらってある。」

と私の頭にその大きな手を乗せる。

「え、なんで?」

「紗優美、明日、手続きとか色々あるだろ。
1人じゃ不安だろうから、付き合って
やろうと思って。」

賢吾は、私の頭に乗せた手でわしゃわしゃと頭をかき混ぜるように撫でた。
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