伝わらなかったあの日の想い
私が慌ててついて行くと、賢吾は、縁側のカーテンを開け、掃き出し窓も開けた。

「座れよ。」

賢吾は、縁側に腰を下ろす。

「うん。」

私は並んで座り、賢吾に習って空を見上げた。

「綺麗な月。」

中天に浮かぶ明るい満月。
そういえば、中秋の名月ってニュースで言ってたな。

「くくっ
そっち?」

隣で賢吾が笑う。

「え、そっちって?」

私、なんか変なこと言った?

「いや、別にいいんだけどさ。」

賢吾はおかしそうに、くすくす笑ってる。

「何よ? はっきり言いなさいよ。」

私が言うと、賢吾は、私の頭に手を置いて、自分の脇に抱き寄せた。

これじゃ、賢吾の顔が見えない。

「おじさんとおばさんの星もあの中に
あるかなと思ってさ。」

ああ…
賢吾なりに慰めようとしてくれたのか。

「うん。」

私は、そのまま賢吾に寄りかかって、明るすぎる月とその輝きに負けている星を眺めた。
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