君色に染められて
彼女は驚くほどに変わった。
二か月ほど前までは、ほとんどの生徒に嫌われていたはずなのに、今じゃ生徒に囲まれている。


「機嫌悪いな、翔太」


教室の自分の席から頬杖をついて廊下を眺めていたら、友人の亮介が前の席に座った。


「……別に」
「いやいや、明らかに悪いから。何があった?」


彼女が、俺だけに見せてくれていたはずの笑顔を、簡単に見せていることが気に入らない。


だなんて、言えるか。


「ところでさ、変わったよな。神田先生」


俺の話はどうでもいいってか。


「俺、今の先生のほうが好きだな」


胸がざわついた。


あれだけ可愛い笑顔を見せていたら、誰だって好きになる。
だから、独り占めしたかったんだ。


「親しみやすくて」


安堵の溜息を零すと、亮介が声を殺して笑った。


「お前、わかりやすいなあ」


しまったと思った。
亮介の言葉にいちいち反応して、それが顔に出ていたらしい。


「翔太……本気か?あの堅物だぞ?」
「あの人のいいところは俺だけが知ってたらいいの」


そう言いながら廊下を見ると、センセと目が合った。
センセは手招きをし、俺を呼んだ。


まるで犬のように、彼女のもとに駆け寄った。
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