大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】

無変化への焦燥感

 ―――――――――――――――
 ――――――――――

 シンデレラボーイ。そう伊ヶ崎悠真は呼ばれていた。

 ある日突然、上流階級の仲間入りをした所から付けられた陰のあだ名。彼は気にもとめていなかったけど。

 伊ヶ崎悠真と出会ったのは、高校二年生になりたての頃だった。学年が変わると同時に転入してきた彼は、一日にして学校中で有名になった。

 決して彼の顔が整っていただけじゃない。私達の通っていた有名大学附属の中高一貫校に、転入生が入って来た事自体が珍しかったのだ。金持ちで優秀な生徒ばかりが集っていたので、よっぽど頭が良いのか、家がお金持ちか――のどちらかだと噂していたけれど、両方だった。

 そして当時学年でも有名だった、代々政治家の家の息子と、大病院を幾つも持つ医療法人の跡取り息子とすぐ仲良くなっていた事も騒がれる理由の一つだった。

 女子的には将来有望な男がすぐ側にゴロゴロと転がっているので、捕まえない訳が無い。勿論政治家と医療法人の息子はターゲティングされまくっていた。その女子達も、有名な企業のご令嬢だったりするものだから、完全に上流階級が集っていた学校である。

 成瀬(なるせ)(りょう)は、その大病院を幾つも持つ医療法人の跡取り息子である。


「久しぶりなんじゃない?」
< 36 / 154 >

この作品をシェア

pagetop