大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】

(悠真)

 ―――――――――――――――
 ――――――――――

「顔が緩んでますよ」


 朝、出会い頭に運転手から指摘されて、思わず顔を引き締めた。


「幸せそうでなによりです」


 俺の反応に老齢に差し掛かった運転手は、微笑ましそうに生暖かい目を向ける。若干はぐらかしながら、後部座席に乗り込む。

 なんせこちらとら、長年の片想いが成就したのだ。彼女が俺を誘惑してきて、我慢出来るわけがない。そして、彼女も俺の事がずっと好きだと知って舞い上がらない訳がない。


 昨夜は、――最高の一夜だった。


「――理性飛ばしたら、ごめんね?」


 いつも寝ているベッドに美咲の薄茶色のサラサラの髪が散らばる。耳を甘噛みしながらそう言った後、ようやく自分が既に理性を半分飛ばし掛けていた事に気付く。

 でも、ここで引き下がるのはかなり辛かった。


「俺はずっと前から美咲の事好きだよ。美咲は?」


 彼女の髪を手ですきながら、感触を楽しむ。見下ろした美咲の顔は真っ赤で、お酒で酔っ払っているらしく、ふにゃふにゃだった。


「……すき。私もずっと前からすき」


 頬を染めながら、俺の事を好きだと縋り付いてくる彼女は……、最高に可愛かった。思わず猫可愛がりしてしまう位には。
< 72 / 154 >

この作品をシェア

pagetop