指輪の魔法がとけた時
***
慎の家に引っ越しを終えた頃、亮二と常務のお嬢さんの結婚式の日取りを耳にした。

古巣の第一営業部にも二次会参加の声がかかり、私もいかざるえなくなってしまった。

慎はちょうど以前いた横浜支社への出張が重なり、苦い顔をして舌打ちしていたが、田仲が

「大丈夫ですよ、課長。
俺が長谷川のことは守りますから」

と眼鏡を持ち上げニヤリと笑うと、もう一度舌打ちして

「チッ、田仲に任せるのも安心できないがしかたないか。

俺がいないからって付け入る隙はイチミリもないが、田仲あすかには絶対に手をだすなよ!

何かあったらお前、即本社から跳ばす!!」

鋭く睨む慎に肩をすくめて

「うわっ、すっげー公私混同ですね。っていうか、冗談じゃなく本気でやりそうだからな課長、こえー」

「当然だろ。俺は有言実行の
男だからよーく覚えておけ。本当は出張に同行させたいくらいなんだ」

やりかねなさそうな慎に

「これ以上あおらないでっ!」

と田仲をなだめた。
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