完璧美女の欠けてるパーツ




飲み会の帰り道。
ぼんやりと終電に乗り、夜景の前にある電車のガラスに自分の姿を映す。
あれだけ飲んだのに顔に出ない。
お酒が強すぎて可愛くない。
梨乃はゆっちゃんのようにテンション高く可愛く酔いたかった。

自分の姿と一緒に映るのは、近くで立ってるサラリーマン数名の視線。さりげなく梨乃の方をチラチラと見ている。いつもの視線だけど、それはただの視線で、次の行動に移る勇気ある男性を梨乃はいつも待っていた。

『よかったら、もう少し飲まない?』

ワインバーを出た時
そんな言葉をかけてきた知らない男性がいた。
30代後半で軽い感じのサラリーマンだった。酔ったはずみで言ってくれたのだろう。
でもその誘いは後輩たちに見事に蹴散らされてしまう。

『梨乃さんに声をかけるな!』
後輩たちは梨乃をガードして近くの駅まで送り、満足そうに三次会へと消えて行く。

ありがたい
本当にその気持ちはありがたいけど……。

ため息をしている間に降りる駅が来たので、人の波に紛れて改札に向かうと、急にギュッと腕をつかまれた。

見上げると、知らない男性が梨乃の腕をつかんでいた。
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