完璧美女の欠けてるパーツ

「前から何度か梨乃さんの姿を見かけて、『綺麗な女性だな』と思いました」

梨乃はそう言われて小さく首を横に振り「ありがとうございます」と口にした。

「そして、人づてに聞いた話ですが『梨乃さんが恋人と別れた』と。本当ですか?」

「はい。本当です」
笑顔で梨乃は返事をする。

「よかった。だから僕は、どうにか梨乃さんと近づきたくて今日行動に出ました」
高崎はにっこり笑顔で梨乃の顔を見る。
自分に自信のある男性は、一般的にストレートで行動力がある。
さすがハイスペックと梨乃は心の中で感心する。

「連絡先を教えてもらえますか?近いうちにまた会いたい。できれば今度はディナーがいいな」
ブランド物の名刺入れからスッと高崎は自分の名刺を渡して、梨乃の携帯番号を聞いてきた。

「一度で覚えますから、言ってみて」
茶目っ気たっぷりに高崎は梨乃に言い、梨乃は自分の番号を一度だけ高崎に教えた。

「今夜電話します」

「夜まで覚えてます?」

「チャンスを僕は逃さないタイプなんです」

そんな会話をしてから
無事懐石ランチは終了し、高崎はエレベーターで28階の梨乃のフロアまで見送ってくれた。

「では、また」

「ごちそうさまでした」
お礼を言って今度は梨乃が高崎を見送る。エレベーターが閉じたとたん、梨乃はレンジでチンされた雪見だいふく気分で溶けまくる。
嬉しくて溶けてる……ならいいのだが、緊張がほぐれて溶けている状態だった。
とってもありがたく、大成功!なんだけど、梨乃の心は疲れ果てている。
経験前に会話して、食事して、デートして、段階を踏まなければいけないんだ。

「大志さんに報告しなきゃ」
疲れた心を奮い起こす為、言葉に出して宣言する梨乃だった。

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