甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

 私の言葉に、さらに目を丸くした和美はニヤッと笑うと理紗さんに向かってグッと親指を立てて言う。

 「その人、いい感じなのね? 任せて! 可愛い夏乃を送り出すわ!」

 和美は総合商社で働いているが、和美の上司は繊維、アパレル部門のトップらしくファッションにはとても詳しい。

 「明日は、うちのブランドのショップに行こう! 社割利かせて賢く可愛くしちゃうからね!」

 あぁ、和美のスイッチを入れてしまったらしい……。
 和美は今でこそ秘書なんて仕事をしているが、学生時代はバイト感覚でモデルをしていたのでファッション関係は強い。
 就活で今の会社に決まったころにモデルの仕事はスパッと辞めてしまった。
 かなり人気もあったのに、あっさりしていたので不思議だったが和美はこういった。

 「もとからモデルで生活しようなんて考えてなかったの。会社員が一番安心よ。自由業は大変だから、バイト程度で十分よ」

 元々が堅実な性格の和美は、そういった考えから大学卒業後は商社で秘書として経験を積み、現在は役員秘書として日々忙しそうに過ごしている。
 それでも月一で私の職場に顔を出し、休みを合わせては一緒に甘いもの巡りをする。そんな仲のいい私と和美にはそうそう隠し事はないが、今回のお見合いの件は私も和美もバタバタとしている時期だったため、まだ報告していなかった。

 私に降ってわいたデートの話に、和美が食いつくのも頷ける。私が男子が苦手なのも、あまり恋愛に興味がなさそうなのも知っていたからだ。

「どんな人なの? 優しそう?」

 そんな少しの興味と心配そうな複雑な光を目に宿しつつ和美が聞くので、私は少し考えてから答えた。

 「優しそうで、柔らかな感じの人だよ。和美が好きなアプリゲームの会社の社長さん」

 私はそう言うと、和美はぴくッと反応してそして言った。

 「もしかして、イノセントの社長なの!?」

 「そう、そこの社長さんで高峰電機の次男坊なんだって」
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