甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

「こんばんは。ちょっと早く仕事が済んだから迎えに来てみたら、なんとなく後ろ姿が夏乃ちゃんな気がして、合ってて良かった。さ、どうぞ?」

そうして助手席のドアを開けてもらった私は、急いで乗り込んだ。
ドアを閉めたあと、高峰さんも直ぐに車に乗り込むと私がシートベルトをしているのを確認すると車は動き出した。

「今日の服、夏乃ちゃんによく似合ってるね」

チラッと横目に今日の私を見て、高峰さんは褒めてくれる。
そんな高峰さんも、今日はスーツじゃなくってカジュアルな感じのシャツに紺色のチノパンとデッキシューズというラフな格好で、スーツを見なれていた私にはかなり新鮮に見えて、いつもと違った様子に胸がざわめく。

「高峰さんも、今日の格好もよく似合ってます……」

頑張って返したものの、なんだか緊張しちゃって上手く話せない。
だって、背が高くって、体格の良い高峰さんはカジュアルな服だと更に体格の良さが際立ってて、男性に免疫の無い私はどうしていいのか分からなかった。
赤信号で止まると、私の髪に不意打ちで伸びてきた手がゆるふわにした髪を絡めているので、私がチラッと伺うと高峰さんは微笑んでいた。

「いつもはコック帽に隠れてたけど、こんな感じの髪型も可愛くて良いね」

ドキドキとしつつ、顔を上げると高峰さんはにこやかで、余裕を感じる。
私はドキドキが途切れることなく、もうすでに胸いっぱいだ。

「今日は、お出かけなんで……」

最後まで言いきれない私に、高峰さんはそれでも察したのか、微笑みを深くして言った。

「嬉しいな。俺に会うから可愛くしてきてくれたんだ。ダメだ、嬉しくて顔が崩れそうだよ」

そんなことを言う高峰さんを見ても、カッコ良さは損なわれていないなんて、ちょっと美形に羨ましさを感じていると、クスッと笑って高峰さんは言った。

「今日はうちの父と母がお気に入りの隠れ家的フレンチのお店に行こうと思ってるんだ。たまにはフレンチも良いでしょう?」

その問いかけに、私は頷いて返事をする。

「はい。でも私、マナーに自信がありません……」

そんな私に、高峰さんはにこやかに教えてくれた。

「そんなに堅苦しいお店じゃないし、そこはお箸も一緒に出してくれるからマナーを気にするならお箸で食べたらいいよ」

その言葉を聞いて、肩に入りかけていた力を抜くことが出来た。
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