死者の体温〜最期のメッセージ〜
「かわいそうですよね……。家に帰ったら亡くなっていたなんて……。しかも、何の異変もなく……」

大河がそう呟き、藍も「そうね……」と頷く。愛する人を想う石川翠の気持ちは、藍には理解することができた。

「……お兄ちゃん」

藍の頭の中に、まだ行方のわからない青磁が浮かぶ。藍は写真を取り出し、そっと抱きしめた。



警察署では、藍の元恋人の如月大輔(きさらぎだいすけ)刑事がコーヒーを飲んでいるところだった。最近は凶悪事件も少なく、未解決事件の資料に目を通すことが多い。

「……今日は早く帰れそうだな」

藍を食事にでも誘おうか、と如月刑事が思っていた時、警察署内に放送が流れた。

「××製薬会社の敷地内で何人もの人骨が発見された。直ちに現場に向かってくれ」

人骨が見つかったとは、穏やかなものではない。如月刑事はすぐに頭を切り替え、部屋を飛び出す。

「原!事件が起きた、お前も来い!!」

自販機の前で飲み物を買おうとしている部下の原光矢(はらこうや)刑事に如月刑事は言い、車へと向かう。

「せめて飲み物くらい買わせてくださいよ〜」

原刑事の言葉は無視された。
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