いつも、ずっと。
早く立派な社会人になって、明日美のことを幸せにしてやりたい。

いつか、きっと。

南海高校では、勉強だけでなく部活にも打ち込んでいた。

中学から始めた軟式テニス。

中学で頑張って良い成績を残してきたから、テニス特待生として南海に通えることになったんだし。

高校では先輩とペアを組むことになり、中学とはまた違った楽しさがあった。

「御子柴、お前さぁー本当にあの『生田さん』とは友達なんか?」

「ただの友達っていうか、親友ですけど」

この前の新人戦で応援に来てくれてた明日美のことを、俺とペアを組んでる田代先輩が気に入ったらしい。

「じゃあさ、今度俺に紹介してくれん?可愛かったし俺のタイプなんだよなー。頼むよ!」

参ったな……。

先輩だし断りづらいけど、紹介なんてできるか。

「紹介っていうのはちょっと……。でもまた試合観に来てくれるかもしれませんよ」

新人戦では同学年で組んだペアだったからか、初戦で負けてしまった。

次の試合はまた田代先輩と組むだろうから、簡単には負けたりしない。

明日美は友達を連れて来たがってたし、これは上手くやればいい方向に転がるかも。



夏休み前の試合を明日美と友達が観に来ることになって、田代先輩のモチベーションも上がったようだ。

テニスの練習にも一段と気合いが入る。

今度こそは、明日美にいいところを見せなければ。

その日の試合ではトーナメントを順調に勝ち進み、ベスト4に入ることができた。

準決勝で負け三位決定戦でも負けてしまい、表彰台に上ることは出来なかったけど。

田代先輩は試合の後、負けたのは自分のせいだと反省していた。

新人戦でペアを組まされた同学年のやつは、負けたことを全部俺のせいにして文句だらけだったが、この先輩は俺がミスしても責めたりしない。

次はこうしようとか、アドバイスをくれたり励ましてくれたりする。

だから俺も先輩の期待に応えるべく努力しなければと思うのだ。

そんな先輩だから、彼女が欲しいと思っているのなら協力したいし、上手くいったらいいのにと願う。

ただし、明日美だけはダメだ。

いくら田代先輩が明日美を気に入ってしまったとしても。

小六になる直前の春休み、俺は明日美に一目惚れしてしまったんだ。

あの頃からずっと明日美の事が好きだし、誰にも譲るつもりはない。

< 4 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop