好きなんかじゃない
楽譜のタイトル

藤田との出会い

 部室のカギを閉め、ようとした。
できなかったのは、閉め始めたドアに藤田が滑り込んできたから。
藤田はドアの後ろに身を縮めると、後ろを確認し、

「かくまって!」

と、短く言った。
藤田は同じクラスだけど、話したことはない。
いつも、派手なたくさんの友達と一緒にいる。
まだ、一年生なのに藤田は髪を染めている。
藤田の走ったきた方向から疲弊した諸田先生が走ってきた。
私は藤田が隠れるように、ドアをそっとしめる。
諸田先生は、私にすごい剣幕で言う。

「おい!ここに藤田来なかったか!」

「みて、ないです。」

とっさにそう答えたのは、文芸部の作品を読まれたくなかったから。
先生の走っていく音が遠ざかってから、私はドアを開けて藤田に声をかけた。

「先生、行ったよ」

藤田が頭だけ出して、廊下を確認する。
亜麻色の髪が綺麗に夕日を反射する。
藤田はドアを大きく開けた。

「あーよかった、ありがとね」

「あ、うん」

藤田はほっとしたように、息をつく。
そして目の前にある机を見て尋ねた。

「ねえ、ここって何部なの?」

藤田が私に尋ねる。
私はドアのところに立ったまま答える。

「……文芸部、」

「ふーん、知らなかった。あったんだそんな部」

知らなくても、無理はない。
廃部寸前で、幽霊部員をのぞけば、
私一人で運営されているのだから。
藤田は立ち上がって、部室の中のものを見だした。
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