身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
大手企業に勤めてはいるが、全国にある営業所も合わせれば、何千人といる社員の中のひとりであり、いわゆる事務職というお姉ちゃんに比べれば、なんてことのない仕事をしている。
髪の毛もいつもはかるくブローしているだけだし、化粧も薄い方だと思う。
あのデートの日のように背伸びをしなければ、実年齢よりむしろ若く見られるかもしれない。
友人の明日香は、私とは違い秘書課に在籍していて、華やかな美人だ。

「どうしたの?浮かない顔して」
「最近色々あって……」
「なにが?」
何が……そう問われると、どう説明していいかわからず、私の口からため息が漏れる。
「不幸になるよ。そんなため息ついて」
簡単に説明できないことを悟ったのか、明日香は苦笑するように言うと空を見上げた。
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