身代わり婚～偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています～

その日も、朝から甘々の悠人さんに翻弄されていた私は、いつもより遅くなってしまい、慌てて会社へと滑り込んだ。

「礼華、珍しいじゃない。こんなに遅いの」
明日香の声に、歩きながら私は振り返った。

「おはよう、そうなの、あー、エレベーターいったばかり……」
無情にも２階を指すエレベーターに、私は小さくため息をつく。
いつも混雑が苦手で私は早く出社している。
かなり多くの人がエレベーター前には集まってきて、私は端の方へと身を寄せた。

「本当にこの時間はすごい人よね」
明日香もうんざりするように言葉を発すると、周りを見回す。

「そうは言うけど、明日香はいつもこの時間でしょ？」
「まあ。副社長とか役員は出社が遅いから……あっ専務」
その言葉に、私は明日香の視線の先をみた。

周りの人が一斉に頭を下げたのを見て、私もこれでもかというほど下げる。
心臓がバクバクと音を立てて、明日香の言葉が頭の中をぐるぐると回り続ける。

専務？専務って言った？