見ツケテ…
「ちょっと直弘、今日は美奈になにしての」


窓際に立って知らん顔をしている直弘へ近づき、そう聞いた。


「別になにもしてないよ。ちょっとノート借りただけだって」


「そのノートに変なイラスト描いて返してきたんだよ!」


美奈は文句を言いながら数学のノートを開いてあたしに見せて来た。


ノートの隅っこに妙なポーズをとる棒人間が描かれている。


それが面白くて、あたしはプッと噴き出してしまった。


「ちょっと恵梨佳、笑いごとじゃないよ。このノート今日提出なんだから」


美奈はふくれっ面のままあたしを睨んで来た。


「ごめんごめん。でも、このくらいなら平気じゃない? 隅っこの方だしさ」


あたしは美奈にノートを返して言った。


「そうだけどさぁ」


せっかく綺麗に使っていたノートを汚されて、美奈はご立腹だ。


「直弘も、ちゃんと謝ったら?」


「えぇ? 俺、謝るようなことしたかぁ?」


「美奈は嫌がってるでしょ」
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