見ツケテ…
「ただ、俺の勘違いかもしれないことなんだ」


「勘違いでも大丈夫だよ」


あたしは優しい声で言う。


勘違いだとしても、誰も知樹を責めたりしない。


「あの……池から出て来た手。あの手が指輪をしているのが見えたんだ」


「え……?」


あたしは藻に絡まって何かが光って見えたことを思い出した。


その話は知樹にしていて、ただの勘違いだという結論で落ち着いていたのだ。


「ちょっと待って。指輪って本当? あたしが光る物が見えたって言った時、知樹は否定したじゃん」


「……ごめん。確証はなかったし、怖かったんだ」


『怖かった』


その気持ちは痛いほどよく理解できた。


あんな経験をしたのだから、なにかに気がついてもむやみに首を突っ込みたくもないだろう。


「その指輪がどうかしたのか?」


直弘が話しを先へ進めるように促す。
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