愛され秘書の結婚事情

「常務。ちなみに今夜、食事をする店というのは……」

「うん。フレンチの人気のお店でね、ジャルダン・セクレって店なんだ。社用で何度か使ったから、佐々田さんも知ってるでしょ?」

「ジャルダン・セクレってあの、高級フレンチのお店ですか!」

 思わず大声で叫び、七緒はハッとして口元を押さえた。

「失礼しました……」

「いや」

 頭を下げて詫びる七緒を、悠臣は穏やかな笑みを浮かべて見た。

「あそこの料理は絶品だからね。佐々田さんも一度、連れて行ってあげたいなって思ってたんだよ」

「そんな……もったいないお言葉です」

「いやいや。君みたいに有能な秘書さんを、年に一度しかねぎらってあげられないのは、逆に心苦しいくらいだよ」

「恐れ入ります」
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