愛され秘書の結婚事情

6.


「すまない。本当に……僕が馬鹿だった」

 浅慮な己に腹を立てながら、悠臣は詫びの言葉を口にした。

 自分がどうすればいいのか。

 先程抱えていた疑問の答えを彼は今、彼女から与えられた。

 答えはとてもシンプルで、簡単なものだった。

 そう、何も迷うことはない。自分はただ、彼女が望むことをすればいい。彼女が愛せと求めるのなら、いくらでもその求めに応じればいい。もし別れてくれと言われたら、その時は潔く身を引けばいい。

 来てもいない未来に怯え、今目の前にいる彼女への愛さえ出し惜しみすべきではない。

(本当に僕は……どうしようもない大馬鹿者だ)

 自身の愚かさに笑いながら、悠臣は七緒の頬を両手で包んだ。

 黒く長い睫毛に縁取られた目の、黒く潤んだ瞳が真っ直ぐに彼を見つめている。

 今はただ、この瞳の魅力に従おう、そう思った。

 無言で見つめ合い、二人は唇を重ねた。
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