愛され秘書の結婚事情

4.


 月曜日。午前十時。

 一足早く出勤した七緒は、悠臣が出社するまでにデータ整理をやっておこうと、自分のデスクでパソコン作業をしていた。

(モーニングコールをした方がいいかな……)

 彼女が家を出る際、悠臣はまだぐっすり眠り込んでいた。

 七緒が携帯電話を取り出した時、そこで内線が掛かってきた。

「あの、佐々田さん。またあの、塚川さんて方がいらしてるんですけど……」

 受付からのその報告を受けて、七緒は「え!」と短い声を上げたあと、「すぐに行きます!」と電話を切った。

 エレベーターで下降する時間ももどかしい思いで、七緒が一階受付に走ると、果たしてそこに、央基が立っていた。

「ちょっ……!」

 思わず怒声を浴びせそうになった七緒は、人目を気にしてどうにかその声を飲み込んだ。
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