愛され秘書の結婚事情

4.


 部下に手製の朝食を振る舞って、悠臣は笑顔で帰って行った。

 一人になった七緒は、彼が置いていったバラを二つに分けて花瓶に生けた。

 職業柄、花束をおすそ分けされる機会は多く、1DKの一人暮らしなのに、この家には花瓶が三つもある。そしてこの三つの花瓶も全て、何かのイベントでの貰い物だ。

(この白い磁器の花瓶は……確か常務が頂いたものを、私に譲ってくれたんだっけ……)

 小さなダイニングテーブルにそぐわない、三十本ものバラの花は間近で見るとなかなかの迫力だった。

 悠臣がプレゼントしてくれたのは計五十本の赤いバラで、意味は「永遠に愛す」。

 残りの二十本は別の花瓶に生け、ベッドサイドに置いた。
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