社長の溺愛にとかされて
席を立って、あわててお会計に向かう。
その際も、慎也達から目が離せない。

「あの？お客様？」

「あ、すみません」

あわてて、小銭を財布から出そうとしても、手が震えて上手くつまめない、
もう一度、「すみません」と言って、なんとかお会計をする。

胸がどくどくと激しく音を立てる。

顔が強張っているのが分かる。

おかしくない程度に距離を開け、様子を伺う、
慎也に間違いない。

どう見てもお見合いだよね？

だから、今日の運勢最悪だったのに！

過去の傷が疼く。

三股かけた元カレ。

浮気相手の肩を抱き、私を非難する、
その時の映像が鮮明に目の前に浮かび、めまいがする。

体を少し前かがみにするも、
体の体温が一気に下がり、血が引いていくのが分かる。

苦しい！！

そう思っても、ちらちら慎也を見てしまう。

祈るように左の薬指を見るも、指輪はなかった。
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