社長の溺愛にとかされて
そんなオフィスをかき分け、自分のディスクに向かう途中、
男性の声が聞こえた。

「う~ん、玲緒奈ちゃん?」

「そうですよ、おはようございます」

そう言って、空気を入れて膨らませる、簡易ベッドに寝ていた
男性に話かける。

彼は本庄(ほんじょう)さん、年の3分の1は会社に泊まり込むので、
このやり取りもすっかり慣れてしまった。

私服OKな会社で、中にはジーンズとTシャツといった、
社会人とは思えない服装をする人もいる。

本庄さんは、服はいつも黒、ズボンも黒、靴も黒と、
身に着ける物は全て黒だが、頭は金髪。
これ以外のスタイルを見た事がない。

噂ではパンツも黒と言う事だが、当然確認未である。

「ちょっと飯食ってくっわ」

「いってらっしゃい」

少し寝ぐせがついた髪を、手でがしがしかきながら、
オフィスを出ていく本庄さんを笑顔で見送る。
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