クリスマスの想い出
欠伸を噛み殺しながら3教科の補習を乗り切り、午後からは部活動に勤しんでいた。

雪は一時的なものだったのか、今は曇っているが止んでいる。

今日は筋トレの日。

俺たちは曇天の下、冷たい空気に触れながら走っていた。

「なんでクリスマスにー!!」
「彼女が欲しいー!!」

走り終わった先輩方が、叫びながら腹筋をしている。
俺と茜はその横を静かに通り過ぎた。

「茜は、予定とかないのか?」
「今日ってこと?特にはないなー お前は霧谷だろ?」
「まあ、な。」

茜とは小学校の頃から一緒だから、桃花のことは知っている。
走りながら話すと、白い息が空気に溶け込む。

「俺も、好きな人と会えたりしたらなー」
「うん?お前って好きな人とかいたっけ?」

俺が聞き返すと、茜は「あ」とでも言うように赤くなっていく。
走りながらだから、ふと言ってしまったのだろうか。

「あー、今のなしっ!」
「だが断る。」
「なんでだよ?!断んな!」
「で?誰?」

俺が聞くと、茜は前を向いたまま答えた。

「……信条。」
「……え」

その名前が、なぜか心にずしっときた。

冷たい空気が、俺の心の中まで染み込んできているようだった。
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