Little Gang

・・・最後まで、分からなかった。

今、こうして兄さんが満足そうに笑ってる理由すら、正確には理解できてない。


『でも、私は兄さんのことを・・・嫌いには、なれなかったよ』


馬鹿みたいだね。

あんなに酷いことされたくせに、兄さんのことが好きだなんて・・・。

【不思議な子だね】、いつだったかユウタママはそう言った。

自分でも分かってたよ、私は変わりモノだ。

だけど、今は素直によかったと思えた。

兄さんが人間らしさを取り戻せたなら・・・よかった、と。


「・・・ありがとな、ユリ」


『さよなら、兄さん。 地獄でね』


引き金に掛けてた指に、力を込める。

Good Bye, My Brother.

・・・指が震えることは、なかった。

バンッ!

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

邪魔、された・・・?


『はっ、「盛ってんじゃねぇよ!! このッ、シスコン野郎!!!」


・・・・・・!? まだ撃ってない。

今の、私じゃないよ。

硝煙の香りを纏った何かが、肩を撃たれて苦痛に顔を歪める兄さんを押し退けて私の前に来て、羽織ってた上着をバサッと肩にかけられた。


『・・・ハル、ジロー?』


よく見たら、ハルカくんが真剣な顔で必死こいて全開のボタンを閉めてた。


「・・・んだよ、下手くそ・・・」


ハルカくんの叫び声で生き返ったのか、不機嫌そうに兄さんがムクッと起き上がった。


『うぐっ・・・ごほごほ!』



「ちょっと・・・!!」


咳き込んだ私にハルカくんが水を渡し、それを一気に飲み干す。


『ごほっ、げほっ・・・な、何やってんの?』


「・・・何って、人助けだけど」


ハルカくんは気まずそうな顔して、小さな声で呟いた。

ねえ、バカなの?

アホなの?

ここの壁にはライフルが配備されてる。

兄さんがスイッチを押せば、部屋の周囲からいくつもの銃弾が放たれるんだ。

死ぬのは簡単だけど生きるのは難しい。

なんでわかんないの?
< 107 / 171 >

この作品をシェア

pagetop