Little Gang

『お待たせ。 今回のは結構自信作だよ』


そう言って、達成感に震える家政婦さんがテーブルに置いたのは・・・。


「炭・・・?」


思いっきり引きつった顔をするシュウ。

ひどい・・・ひどすぎる・・・どっからその炭がッ?

あちこち焦げたり形が崩れてる物体をまじまじと見つめて、さっきふ菓子に見えたのは炭だったのだと気づく。


『卵焼きだよ!』


「へー、そう、卵焼きなんだ」


エ? ・・・ソウデスカ・・・。


『卵焼きは失敗したけど、メインディッシュはうまくいったよ』


・・・ホントだ。

嘘みたいに無事な料理やデザート。

・・・しかも、好みにドンピシャだった。

だんだん涼しくなってきた季節にピッタリのキムチ鍋は、身も心も温まりそうだ。


「いただきます」


手を合わせる兄弟。

そして好きな具材に箸を伸ばして口に運ぶ。

辛い・・・汗が止まらない。

辛いのにヤミツキになる・・・。

とろとろの豚肉にモツ。出汁が染み込んだ豆腐。シャキシャキの白菜(キムチ)。

高級食材の渡りガニ、ごろごろした肉団子に鍋の脇役的存在のニラやシイタケ。

トッポギという韓国の鍋に入れる餅もあった。

シメのラーメンは絶品だ。


「こんなにおいしいの、食べたことない」


「パティシエの修行とかしたの?」


料理番長のユウタママが認めるのも頷けますねえ・・・うんうん。

いや〜満たされるな〜。

ユウタママの手放しで喜ぶ姿にみんなは愉快そうに目を細めてる。

イヤ〜、スゴイデスネ。

とはいえ、このミルクティー風味のスコーンは文句なしの上出来だ。

ナッツとドライフルーツをたっぷり混ぜたパウンドケーキも、いつの間にか消えてたくらいだから味は保証してあげます。

素朴だけど優しい味がする。

まるで、母さんのスコーンをそっくりそのまま再現したかのような・・・あの頃の家族団欒で幸せな情景が思い浮かぶ気も・・・。

懐かしさが込み上げてくる。

頬を緩ませて物思いにふけてると、ふと視線を感じた。

視線の方を見ると家政婦さんと目が合う。

家政婦さんは僕を見ると悪戯が成功した子どものような無邪気さで笑い、そして誰も手をつけない炭(卵焼き)を頬張った。
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