Little Gang

「ねえ、今日もここに居座るの」


『え? もちろんそのつもりだけど・・・』


「家政婦、やめたら? 嫌なこと無理にしても楽しくないじゃん」


イヤ? 家政婦の仕事がッ?


「あ、良心が痛む? でも“無責任だ”と君を責める人も“ここにいて”って引き止める人もいないから安心してよ」


知ってるよ・・・そんなの・・・。

あの人懐っこいユウタさんでさえ、決して口や態度には出さないけど、家政婦を歓迎してないことくらい・・・。

私は、消耗品だ。

壊れたら、新しく補充すればいい。


「使えない家政婦一人が休んだとこで、たいした影響なんか出ないでしょ」


変わり映えしない日常が続いていく。

そして、いつかどこかで死ぬ。

私はそれだけの存在。

お天道様の下も歩けなければ、誰の記憶にも残らない。

見慣れた風景に溶け込むように、私の存在は“無色透明”だから・・・。


「父さんに頼まれたからって・・・わざわざ慣れないことに首突っ込む必要あんの」


代わりなんていくらでもいる。

だけど。

傷ついても向き合うのをやめない。

願い縋るのは来世じゃない。

兄弟を知る辛いこの現世。

ぶつかりあって、本音を全て曝けだして。

痛みを知っていこう。

キレイはいらない。


「って、昨日シンがお節介焼いてた」


態度は辛辣だけど、シュウさんの言葉には確かな心配が感じられて・・・。

私は嬉しさと同時に、違和感を覚えた。

あの乱暴な態度からは裏腹に、私を嫌ってることを隠そうともしないシンさんから密かに心配され、他の兄弟たちに不用意に近づいて傷つけられないように西郷家から遠ざけようとしてたなんて頭の片隅にも過ぎらなかったからだ。


『シュウさん・・・』


思わず、端正なシュウさんの顔をまじまじと見てしまう。

もしかして・・・怖がってる?

今更ながら気づいた。

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