続・政略結婚は純愛のように
マリアの頬を一筋の光が流れた。
 隆之と別れたあの日も一粒の涙も流さなかった彼女が静かに泣いた。

「丸大のじいさんの話に乗っかったりしないわ。だって私、あの日わかったんだもの。貴方はあの子を…今井由梨さんを愛してるって。」
 
 マリアは涙に濡れる瞳で隆之を真っ直ぐにみた。
 よく見ると今日の彼女はほとんどメイクをしていない。
 それでも今まで隆之が見たどの彼女よりも美しいと思った。
 濡れた瞳はキラキラと輝いて窓の外の夜景にも負けない。

「あんなに優しく笑う貴方、初めて見たわ。彼女に夢中なのね。ふふふ、おかしいの私。負けたはずなのに、なんだかとってもスッキリしたのよ。貴方が家柄で結婚したんじゃないってわかって…。」

「マリア…!」

隆之は思わず彼女を抱きしめる。
 若い頃からずっと彼女が好んでつけている香水のエキゾチックな香りがふわりと香る。
 そうだ、若くて刺激的な恋を求めていた頃の隆之はこの香りが好きだった。
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