続・政略結婚は純愛のように
エピローグ
 京東百貨店のイベントフロアは熱気に包まれている。
 3年前に全館リニューアルオープンをした新しい建物のこの百貨店のイベントフロアは都心の街を見渡すことができる開放的なテラスがある。
 そこに設けられたフードコートは由梨の意見をもとにした初めての試みであった。
 訪れた人たちはそこで各店舗の商品を少しずつ味わって気に入った物を買って家路につく。
 由梨はそれをスタッフスペースから微笑んで見ている。

「私も混ざりたいわって顔になってるぞ」

 隣の黒瀬が囁いた。
 由梨は微笑んだまま頷く。

「まざりたいです。でも出店者様にはあらかじめ私が欲しいものはお取り置きしておいてもらうようにお願いしてあるので、それで我慢です」

 少し前までは、自分も訪れる客の立場だった。
 由梨にとって物産展は、自由に遠出できない自分をひとときの間広い世界へ連れて行ってくれる魔法の窓だったのである。
 そんな由梨だからこそ、目の前の人たちの楽しそうな笑顔を作る仕事に一欠片だけでも関われたことが誇らしくて仕方がない。
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