続・政略結婚は純愛のように

 隆之は、やや驚いたようにそれを受け取ると黙ってページをめくる。
 そんなにシリアスな内容でもない資料を、難しい顔をして読む彼を由梨は不思議な気持ちで見つめた。

「隆之さん…?」

 呼びかけると隆之は資料から顔を上げて、じっと由梨を見る。

「…よく調べてあるね。」

 褒められているはずなのに何やら叱られているかのような気分で由梨は小さくなる。

「わ、私が思うままに書いただけですから…。」

「…好きだという気持ちが前面に出ているからかな。なかなか着眼点が面白いと思う。…全部読んでみたい。借りてもいいか。」

 断る理由もなく由梨は頷く。

「でも人に見せるつもりで書いたのではないので、読みづらいかもしれません。…手書きですし。」

途中写真を貼ったり、絵を描いたり、思うままに書いた日記のようなものだから、忙しい彼がわざわざ読みたがることに驚きと戸惑いを隠せなかった。

「あぁ、それなら大丈夫。由梨の字は誰よりも読みやすい。」

 ふっと笑みを漏らした隆之に由梨は少しだけ安堵する。
 そして先に休んでていいと言ってファイルを手に寝室を出てゆく隆之を少し不安な気持ちのまま見ていた。
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