続・政略結婚は純愛のように
そんなことがあるはずはない。
 隆之はいつだって会社の利益と従業員の幸せを考えてきた。
 ともすれば対立することもあるこの二つの事柄をバランスよく両立させることができる人物を由梨は彼以外知らない。
 けれどそれを口にすることができないままに、由梨は彼に溺れてゆく。

「ん…あっ…。」

「社長としては失格だが…夫としては当然だろう?」

隆之の瞳を見てしまったらどうにかなってしまいそうで、逃げるように由梨は目を閉じる。
 するとそれが気に入らないとでもいうように隆之の手が由梨の身体を這い回り始めた。

「あっ…!やっ…。」

「本当は秘書室に閉じ込めて、他の男の目になど触れさせたくはない。由梨は俺のものだと知っていて手を出すような勇気のある奴はいないだろうが、それでも我慢がならない。」

「は…あぁ…。」

隆之の独占欲は甘い媚薬となって由梨を支配してゆく。
 頭が霞んで、隆之の言葉がうまく意味を紡がない。
 けれど心の底から湧き上がる強い欲求がそれを求めている。

「たか、ゆきさん…。」
 
「刻みつけておいてやる。由梨がいつでも思い出せるように。自分が誰のものなのかを…。」
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