花はいつなんどきも美しく
意地悪でやっているのではないと、真剣な横顔が物語っている。
それなのに、私は悠之介を睨む。


視線に気付いた悠之介は、小さくため息をついた。


「飲みすぎよ、聡美ちゃん。これ以上はダメ」


何を言っても無駄だと思い、私は席を立った。
真司の前にあるビールを一気に飲み干す。


「おい!」
「聡美ちゃん!」


真司と悠之介の叫び声が同時に聞こえる。


大きな音でジョッキを置く。


「うるさいなあ、もう……おかわり!」
「聡美ちゃん、本当にやめなさい」


悠之介に両肩を捕まれる。
真正面に向けられるママの瞳はとても真剣で、私を心配していることがひしひしと伝わってくる。


心配されること自体は嬉しい。


だけど、こうなったのは半分は悠之介のせいでもある。


もともとやけ酒したい状況、状態だったけど、悠之介のことで頭がいっぱいになるのが嫌で……


なのに、飲んでも飲んでも、悠之介のことを考えてしまっていた。


あの日からだ。
あの日からずっと。


私は私じゃない。


悠之介の胸ぐらを掴み、引き寄せる。


「……子供扱い、しないで」


周りには聞こえないように囁き、悠之介の唇に自分の唇を重ねた。


そしてそのまま意識を手放してしまった。
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