花はいつなんどきも美しく
「……あの男にもそのテクニックを?」
「あれは、フミ君が普通じゃなかったんです!」


食い気味に否定された。


まあたしかに、あのクズ相手だとうまくいかないだろうなあ。


「岩本さんの振り向かせたい人って、ママさんですよね」


まるで仕返しのように、不貞腐れた表情で言われた。


園田雪にも知られているとは思わなくて、思わず園田雪の顔を凝視してしまった。
園田雪はまったく動じず、さっき買ったお茶を飲んでいる。


「どうして……」
「誰が誰を好きなのか、観察するのが得意なんです。まあ、それでなくても岩本さんはわかりやすかったですけど」


そんなに?と聞こうとしたけど、目の前で悠之介にキスするところを見せておいて、否定できるわけがない。


「……どうすればいいと思います?」
「いい機会ですし、距離を置いてみてはどうです?岩本さんとママさんは相当仲がいいみたいなので、僕の方法をやろうと思うのであれば、今だと思いますよ」


なるほど、と思った。


すると話が終わったと判断したのか、園田雪は席を立った。


「あ、あと一つ!」


私は立ち去ろうとする園田雪の背中を呼び止めた。


「……ママ、私があんなことして、何か言ってました……?」
「呆れてましたよ」


恋愛対象に見られていないのか思い知るには、十分すぎた。
私がショックを受けている間に園田雪は戻ったらしく、気が付いたら彼の姿はどこにもなかった。


気持ちを切り替えるために自分で両頬を叩く。


園田雪のやり方なら、今日からしばらくは悠之介とは会わない。
少しだけ、悠之介のことも真司のことも忘れるんだ。
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