花はいつなんどきも美しく
資料を机に置いて、園田雪を見る。


口を開き、閉じる。
それを繰り返していた。


なにをそんなに飲み込んでいるのか、だいたい想像はつく。
だからこそ、私から話を切り出すことができない。


黙って園田雪の言葉を待つ。


「あの……少し、話せますか?」


やっと話したと思えば、よくわからないことを言ってきた。


まあ、愛子がいるところであの話はできないか。


「聡美、今仕事ができたのに?」


私が返事をするよりも先に、愛子がすかさず言った。


仕事に関しては自業自得だから、それを出すのはやめてほしかったが、自分で断ることができそうになかったから、正直助かった。


「あ、えっと……今じゃなくても……」


頼りない感じがにじみ出ている。


これが上司か。
私から恋人を奪った奴か。


……可愛いじゃないか。
普通に、私よりも可愛い。


なるほど、負けるわけだ。


おどおどしている園田雪を見ていたら、敵視している自分が馬鹿らしくなってくる。


自分自身に呆れ、ため息をつく。


「今でなければ、いいですよ」


そう答えると、園田雪は安心したような笑顔を見せた。
それのせいで周りにいた女性陣がかなり盛り上がる。


私はわざとらしく両耳を手で塞いだ。
しかし愛子が右手をずらしてくれたせいで、また賑やかな声が耳を刺激する。


「ずっと緊張したような、張り付いた笑顔してたくせに、不意打ちであの笑顔はずるいと思わない?」


右耳のほうで囁かれた。


……どうでもいい。
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