冒険者の王子は 旅と恋する


「…チェース。
 片付けましょう。本日はウルーチェ様と合流予定です。」

「はいはーい。了解。」

最後のお茶をぐいっと飲み干して
まだ少し赤かったたき火に砂をかける。


チェースは寝袋を器用に畳む。
屋根にしていた
保護布をきれいに畳んで、
出発の用意だ。


「ジョイル。
 その荷物、こっちに入れるから貸して。」
「はい。チェース、ついでにこれもお願いします。」

遠慮はないが、ジョイルは敬語キャラだ。
キャラっていうのはちょっと失礼か?

敬語のほうが楽っていうからあんまり突っ込まないけどさ
友達だから 別にいいのに。

まぁ、俺が「フランチェスコ第二王子」って知ってるからな。

壁を感じる?
そんなことナイヨ。

そんなもんだろうな、という 一種のあきらめにに似た理解。かな。
伊達に14年も「王子様」やってないからさ。

理解してる。

ま、それも『友達』の一種だと思って
こっちが勝手に気兼ねない友だと感じているからいいなかーってやつ。


「----!!来ました!」
「うわぁ!急だな!!!」

ぶわり、と空気が渦巻いて
魔法陣が目の前の空中に浮かぶ。

圧を感じて
ぶわり、と一瞬鳥肌が立って「またせたな」

と、相変わらずの赤いローブに身を包んだウルーチェ先生が
現れた。

「ウルーチェ先生。
 遅かったですねー」
「フラン王子の護衛騎士たちの追跡がなかなか面倒でのぉ。」

にやり、と笑う。

ちなみに、フラン王子って、俺な。
フランチェスコ第二王子。愛称はフラン。

だから、フランチェスコだから、偽名はチェース。


賢者ウルーチェ。俺にとっては薬学の先生だ。
フランチェスコ第二王子に、しっかり教えていただいた
赤いフードに赤いルージュが特徴的な
年齢不詳の女性だ。

ちなみに、今は初老?ぐらいの
年齢だな。

物語の老婆のようにも、かわいい妹ぐらいの見かけにもなるから
ウルーチェ先生に、『おいくつですか』は禁句だ。
まじで、法律で定めたほうがいいくらいの禁句だ。

< 3 / 44 >

この作品をシェア

pagetop