その青に溺れる
携帯を操作し、ネットバンキングの口座を確認すると、家賃は支払えそうだったが、その後の生活は出来そうにもない。
早く仕事を探さねば、とそのまま就職サイトを検索して眺める。

あらゆる就職サイトを覗いて見たが当ても無く、アルバイト情報を覗いて見ても同じ。
日払いで夜のお仕事などと考えたりして、自分のような地味で色気も化粧っ気も無い女性は無理だろうと匙を投げた。

迫る1週間と言う期間、倒産と言う名のリストラ、当然給料は入って来ない。
最早、脳内に二人の姿も思い描けず、ただ呆然と床に座り込む。
そうして時間が過ぎ、お腹の欲求に答え、その日はそのまま布団に入り、折り返しの電話が来ない相手に八つ当たりをして目を閉じた。

強引に就いた睡眠は深夜に目を覚まさせ、自然な流れでTVを点けて通販番組を眺める。
そして気づく光熱費問題に再び頭を悩ます。

『やはり無理だ』と自棄になり、必要な荷物を纏め、キャリーケースを2つほど引っ張り出して洋服を詰め、それでも足りない分は近くのスーパーで段ボールを貰って詰めた。
それから携帯でレンタル倉庫を探して契約を結び、業者に荷物運搬の手配をして再び眠りに就く。


寝れずに携帯を眺め、その手の中の支払いの存在にも気づいて項垂れる。
でももう、考えてもどうにもならない。
今、自分に出来ることは心当たりの相手に電話を掛けることと待つことくらいだ。

こうして時間が過ぎ、あっという間に更新日を迎え、殺風景な部屋に別れを告げ、キャリーケースを両手に近くの漫喫へ足を運ぶ。

そこは完全個室の鍵付で安全面は万全、あとは仕事を探すだけ。
目の前のキーボードに指を置いたところで携帯が鳴り、その表示に衝動を抑えきれずに出る。

「ねぇ、何回も電話したんだけど」
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