雨がふったからそれで
出逢い
___2019年10月

人気のないカフェの窓際で本を読んでいると
急に降り出した雨。

本をめくる手を止め、
ボーッと窓をつたう雨を眺めていた。

雨を見ていると少し懐かしいことを思い出した。

大好きだった人のこと...。



雨の音を聴きながら
頭のなかで懐かしい記憶を辿っていると

「サービスだよ。」

優しい笑顔のマスターがいれたてのコーヒーを出してくれた。

軽くお礼をいって受け取り、
コーヒーのいい香りを吸い込むと
懐かしい香りを感じた。
たぶん、マスターからだろう。

苦くて重い匂いの中にある少しだけある甘さ。

あぁ、彼と同じ匂い。

いつもなら嫌気がさすタバコの匂いも、愛おしく思えた。


『今日くらい久しぶりに彼のことを思ってもいいかな。』

わざと私は彼と私が染み込んでいる歌を流し
ひとりでに大好きだった彼を思い出しながら
涙で頬を濡らした。
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