夫婦蜜夜〜エリート外科医の溺愛は揺るがない〜
その笑顔にやられ、会いたい気持ちを抑えきれず、忙しい合間を縫って次に店に顔を出したのが一カ月後。しかし彼女の姿はなかった。
とっさに店主に彼女のことをたずねると「娘は就職しました」とだけ言われた。
娘?
就職?
店主の娘だったのか。ここは父が贔屓にしている店でもある。父と一緒に顔を見せていないので、店主は俺が息子だとは知らないだろう。
あまり突き詰めて聞くと怪しまれる。だが、もう一度彼女に会いたい。それをどう伝えればいいかわからず、胸の中にくすぶる想いがどんどん大きくなっていった。
恋だと実感したのは海堂救命救急病院で働く彼女と再会したとき。全身に衝撃が走った。
新入社員だと紹介され、名乗られたときは頭が真っ白になったほどだ。動揺、この俺がたったひとりの女性にこんなにも。
再会できたのがうれしくて、こんなにも恋い焦がれていたのかと実感した。
だが桃子はたった一度会っただけの俺の存在なんて頭にはなく「初めまして、よろしくお願いします」と頭を下げてきた。
少なからずショックを受けた俺は、動揺がバレないよう桃子に対していつも以上にクールに振る舞った。