かすみ草の花束を。


「あははははっ! 今日も元気だねぇ、花咲さんは」

「あっ、流川先輩! おはようございます…!」

黒崎先輩の隣でにこやかに笑っているのは、"流川正人先輩"。

黒崎先輩と同じクラスで、黒崎先輩の近くにいることを許されているお友達である。
黒崎先輩に猛烈アタックするようになって、流川先輩が私にもこうして話しかけてくれるようになった。

きっとすごく、気を遣われてるんだろうなあ……

流川先輩に対してわかっていることは、唯一黒崎先輩が心を許している人物であり、その優しい性格と、抜群のかっこよさでみんなから好かれている、ということだ。
"王子"なんて呼ばれているのも聞いたことがある。

「あ~! 今俺に気づいたって顔したでしょ?
ほんと花咲さんは、純一筋だなぁ」

「はい…! 一生黒崎先輩一筋です!」

私がそう元気よく返事をすると、黒崎先輩は再び呆れたように溜息をついた。


「そんな口だけのやつ、俺は嫌いだから」

その言葉に私は黒崎先輩を見つめると、先輩の目は凍っているように冷たかった。

見ていた周りの人たちが、若干凍りついているのは気にしないでおこう…。

「…口だけじゃありません…! 先輩が、私のことを嫌いなのはよく知っています……」

何回も告白して言われてきた、"嫌い"という言葉。
先輩が私のことを嫌いなのはわかっている。


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