3年後、また恋をしてくれるのなら
私、相原司紀(あいはらしき)には好きな人がいる。まだ入学して1ヶ月しか経ってないんだけどね。でも、いわゆる一目惚れってやつだ。クラスにも先輩にもカッコいい人はたくさんいるけど、私の中で一番カッコいい人といえば、



「おいお前ら静かにしろ〜。授業始めるぞ」


担任の桃山慎也(ももやましんや)先生。皆には桃ちゃんって呼ばれている。先生は嫌がってたけど。天パ気味の黒髪に切れ目でクールな感じの男の人。年齢は26らしい。で、数学教師。私は前から三番目の席だから、先生の顔がよく見える。一番前の方がよく見えるんだろうけど、目がよくない私には顔が見えるだけで嬉しい。


「よーし、まずは、小テスト始めるからな」

「えーっ!そんなの聞いてないんだけど!!」

「聞かなかったんだろーが。いいから始める」

「桃ちゃんの鬼ーっ!」


ムードメイカーの涼宮くんが桃ちゃんに抗議しているが、もちろん桃ちゃんは涼宮くんを無視して小テストを配り始めた。私は小テストで満点を取るために毎日勉強している。なぜなら、桃ちゃんが褒めてくれるから!それだけ!



「よーい、始めっ」



先生の合図で皆が一斉に小テストにシャーペンを走らせる。予習していた私はすぐに小テストが終わってしまった。

暇だなぁ……
私はふと、記入欄に書いてある自分の名前を見た。

先生と結婚できたら……私の名字も桃山になるのかな……

私は、暇だったこともあり、自分の『相原』の文字を消し、『桃山』と書き直した。その名前を見つめてふふっと小さく笑みをこぼした。



「しゅ〜りょ〜。後ろから裏返して集めろ」

「えっ!!?」



いつのまに!?私は急いで消しゴムを手に取るが、間に合わず、スッと取られてしまった。
ぎゃー!!恥ずかしいんだけど!!やめてーーー!!



「相原、何伏せてんだ。まだ寝るのは早いぞ」


恥ずかしさで伏せている私に桃ちゃんがからかうようにそう言った。桃ちゃんの言葉に皆が笑い出した。

私は、それどころじゃなかったけど……
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